グローバルプラットフォーム試験が、一般的に利用可能な薬剤の重症COVID-19に対する臨床試験結果を論文発表: シンバスタチンおよびビタミンC

成人の重症COVID-19に対する複数の介入薬を検討する世界最大の臨床試験であるREMAP-CAPが、ビタミンCおよびシンバスタチンに対する二つの試験結果を同時に報告しました。2023年10月25日にJAMAおよびNEJMに論文として発表され、ミラノのヨーロッパ集中治療医学会で公表された内容はREMAP-CAPの研究成果の一部です。

シンバスタチンは、安価でかつ一般的に広く用いられ、WHOの基本的な薬剤リストにも含まれる薬剤です。重症COVID-19に対して開始された場合、患者の生存やICUでの臓器サポートを要する日数の短縮に96%の高確率で寄与するという結果が示されました。また、3ヶ月時点での生存率向上に92%の確率で寄与するとされました。この結果は、シンバスタチンによる治療を受ける33人のうち1名の命がシンバスタチンにより救われる事を意味します。この試験には13カ国、141の病院から2684名の重症患者が参加しました。

REMAP-CAP内でシンバスタチンを扱う同試験の代表、北アイルランドBelfastのRoyal Victoria病院およびQueen’s大学のMcAuley教授は『これらの結果は、重症COVID-19患者の治療成果をシンバスタチンで改善する可能性が高いというもので、とてもポジティブなものです。この研究は、COVID-19の治療改善に取り組む世界中の医療者にとって助けとなることでしょう。』と述べています。

ビタミンCは世界中で広く利用可能な薬剤で、COVID-19治療としても使われたことがありました。2つの臨床試験 – REMAP-CAPとLOVID-COVID – を通じ、重症の有無に関わらず20カ国2500名のCOVID-19患者が試験に参画しました。その結果、高用量のビタミンCは患者の改善に寄与しなかったことが示されました。これは、COVID-19に対する高用量のビタミンCの効果を検証した最大の試験で、高用量のビタミンCは患者にとって害となりうる可能性も示唆されました。

LOVID-COVIDとREMAP-CAPのビタミンCに関する試験の共同代表であるDr. Adhikariは『グローバルな協力体制のもと、REMAP-CAPとLOVID-COVIDの両試験は、ビタミンCというCOVID-19治療薬としての可能性を秘めた薬剤は、効果がなく、また、おそらく害ともなりえるという結果を示しました。これらの試験結果は、COVID-19入院患者に対するビタミンCの使用は控えるべきと示しています。』と述べました。もう一人の共同代表であるDr. Lamontagneは『これらの結果は、患者にとって利益がなく、また、有害となりえる薬剤を見出すことによる健康上および経済的なメリットの重要性を示しています。』と付け加えました。

この研究モデルは複数の臨床試験を組み合わせ、世界中の患者に参加してもらうグローバルな取り組みを通じ臨床分野に重要なエビデンスを提供できる可能性を示しています。日本のREMAP-CAP代表である藤谷茂樹教授は『これらの結果は、最も重症なCOVID-19患者に対する治療戦略に大きな意味をもたらしました。』と述べています。『REMAP-CAPから二つの結果を同時に論文成果として発表できたことは、この試験が複数の介入薬を効率よく評価できる事を示しています。COVID-19の治療改善に貢献し、この重要な成果に貢献してくださった全ての患者、臨床医、研究スタッフに感謝いたします。』

REMAP-CAPは、呼吸器感染症で入院した患者に対する複数の治療を評価するグローバルなアダプティブ・プラットフォーム試験です。本試験は、2020年3月にはCOVID-19によるICU患者の治療法探索に関する取り組みを開始し、今後も、COVID-19、インフルエンザ、そのほかの重症呼吸器感染症に対する複数の治療戦略を評価していきます。